運動技能の記憶2021/02/03
カテゴリー: 可愛いおばあちゃんになるための教科書
naturally代表の南方和美です。
「運動の短期記憶」は後頭部にある小脳に先ず蓄えられます。
もっと詳しくいうと小脳の表面(小脳皮質)のプルキンエ細胞です。
短期記憶はしばらくすると、別の場所に転送されて「運動の長期記憶」になっていきます。
転送先となる長期記憶の保管庫は、小脳の中心にある小脳核および延髄の前庭核という場所です。
長期記憶に収められると、これが俗にいう「身体で覚えた」って状態。
いったん覚えてしまえば、こっちのもんです。
少し練習すれば、また思い出して同じ動作ができるようになるのです。
しかし、長期に保管されるのは記憶の概要だけで、決して完全なものではありません。
長期記憶を思い出して使う際には、短期の記憶をその都度、繰り返し付け足していくことで完全な記憶に復元するそうです。
この運動技能の記憶を証明する素晴らしいケースを、私はこの目で見ることができました。
事故による頸椎損傷で寝たきり2ヶ月以上。歩くことは無理だろうと医師はじめ誰もが思っていた70代男性。
懸命なリハビリによって硬直していた手先足先が動き出し、少しずつ筋力が回復しました。
OTやPTのお手伝いがあれば立ち上がることができ、足を一歩ずつ出せるまで回復したのですが、補助なしで車椅子から立ち上がることができませんでした。
「筋力の問題だけでなく、もしかしたら運動連鎖の問題もあって、神経と動きの連動がどこかで遮断されて脳まで届いていないのかな?」と、ご本人と何度も話し合いながら練習を行ってきたのですが、子どもの頃どんな運動が得意だったか?という何気ない会話から運動技能の記憶が蘇ってきたケース。
彼の場合は相撲でした。
「相撲の立合い」で、必ずしていた癖を再現すると体幹に力が入って補助なしで立ち上がれたのです。
続いて、パーソナルトレーニングを始めてから一年経過した80代女性。
軽い重量もってのスクワットが安定してきたので、垂直跳びの練習をしました。
二足歩行というヒト独特のロコモーションを考えると、仰臥位だけの、あるいは座位・静止立位だけのトレーニングだけでなく「動く」「跳ぶ」といった動線から身体重心の感覚を引き出したいと私は考えています。
もちろん年齢が高くなれば高くなるほどバランスを崩す危険があるので、ある程度の基礎体力がついてきてからの挑戦です。
最初はまったく跳べなかったので、私と手を繋いで「せーの」の掛け声とともにジャンプ動作をしていたのですが、ある動作で身体が思い出しました。
なんと、縄跳びだったのです。
動き出しの初動を思い出すや否や、まっすぐ上に垂直跳び!それも両足揃えて、真上にジャンプです。
長期記憶の保管って本当にすごい。
身体で覚えたことは、脳と身体がずっと覚えているのですね\(^o^)/
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